人材採用定着しくじり話

従業員はコマ、道具の一部として扱っていた私

あなたの企業での採用活動の主な目的は何ですか?

現在は次代の後継の為。娘婿に継がせる予定だが、その下についてくれる人材を獲得したい。

(以前の目的は業務拡大)

これまでの採用活動で特に重視してきたポイントは何でしょうか?

人間性。9割がご高齢のお客様につき、そのお困りごとが自分事として捉えられることが大切。自分中心のタイプはNG。

過去の採用活動で遭遇した最も大きなしくじりは何でしたか?

トピックとしての、しくじりとは違うかもしれませんが、印象的な離職については、2人の顔が浮かびます。

今はお住まいや暮らし、電化製品や通じて、お困りごとに対応していくサポート全般をさせて頂いていますが、以前は職人を遣うという感じで、仕事を請け負っていました。

その職人で、主力になって働いてくれていたTさんという男性がいました。

23歳で入社して、30歳手前くらいまで働いていてくれたのですが、退職を申し出てきたのです。

「ここの会社にいても、これ以上の自分になれないし、自分の未来が描けない」

自己実現が出来ないと言うTさんは、何が自身にとっての自己実現かは分かっていないようでした。しかし、ここに居てもこれ以上は無いだろうと断言するのです。

併せて、「会社の計画が分からない。5年後10年後、自分が働いている会社がどうなっているのか?自分の立場はどうなっているのか?自分の給料はどうなっているのか?このままやっていたら10年先、どんな世界が待っているのか?」と言い放ったのです。

そしてもう一人、同じく職人として働いてくれたDさんという男性がいました。

Dさんは入社してから少しして、結婚をしました。

子供も生まれ、所帯を持つことで張り切っていたと思います。

Dさん自身は仕事に不満は無く、任された現場でしっかりと勤め上げてくれましたが、職人の仕事は残業が当たり前でした、なかなか決まった時間に帰れることも少なく、それが奥さんの不満になっていったのです。

Dさんは、奥さんからずっと「早く帰ってきて欲しい」と言われていたそうです。

でもDさんは、それを私には言えませんでした。

現場で働くDさんには、日々の仕事の必然性が分かっていて、早く帰りたいとは言えない空気感だったのだと思います。

任された仕事が終わらないのに、家から電話が掛かって「まだ?」と言われる、その環境で仕事をしていたそうです。

板挟みになっていたのは本当にきつかったでしょうね。

遂には奥さんから直接、私に言ってくるようになりました。

「あなた(Dさん)に言っても伝わらない!」と。

そこで奥さんは「〇〇社長は、就労条件であったり、年間休日であったり、そういうものをどう考えているのか?」と私に詰め寄りました。

当時の私の返答は「稼げるんだから…」という、今の世の中では全く通用しないものでした。

Dさんは程なく、力尽きるように退職を申し入れてきました。

職人を遣っている頃は、本当にその日中に引き渡さないといけないという、キツキツの状態で仕事をしていました。一晩かかってやり通すこともあった。なので、そんなことを考える余裕が全くありませんでした。

その日中に終わらなければ、外注で他所の人に頼んででもやるのが仕事でしたが、別途経費をかけて他所に頼むより、自前の従業員で賄う方が売り上げは残る。そんな考えでした。

従業員をコマとして使っていました、道具の一部として扱っていたのです。

その経験から何を学びましたか?今後にどう活かしますか?

当時、うちは従業員を使い倒すという社風でした。

それから、しっかりとした経営計画を持って、従業員にも通達し、自身が働いている会社の未来が、しっかり見通せるような仕組みを作るのに一定の年数をかけました。

その後も離職は起こっているのですが、理由は全く違うものになっていきました。

会社としてのあるべき姿を追う中で「会社についていけないので辞めます」という声があがってきたのです。

それを学校に例えるとクラブやサークル活動の気楽さが無くなって、しっかり成果を追う授業を受けるような感覚になったのだと思います。

そういった落ちこぼれていく従業員について、「仕方ない」と思う反面、思うのです。

過去の過ちという訳じゃないけども、人が辞めるということについては、やはりまだうちのやり方が拙いのではないかということを。

人づくり、町づくりを大切にするということを踏まえて、それは考え続けます。

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