あなたの企業での採用活動の主な目的は何ですか?

未来につなげる為。もの売りではないので10年20年の先までお客様とのお付き合いが続く、その為にも次世代の人材が必要。

これまでの採用活動で特に重視してきたポイントは何でしょうか?

10年先、どうなりたいか?

専門学校を卒業した子たちは面接の前に宿題として出している。

(そこでトンチンカンな答えを出している子は残らないケースが多い)

過去の採用活動で遭遇した最も大きなしくじりは何でしたか?

一言で言うと…「来てくれることが嬉しくて、来る者を拒まず」だったのです。

今は勿論そうですが、当時も「若い子なんて全く応募してこない」「どうやったって、若い子の採用なんて出来ない」という、同業者内での空気がありました。

そういった前提があったので、新卒を採用するにあたって、いろいろと方法を検討したのです。それで、選んだのが、専門学校卒に特化した求人サイトでした。

登録した初年度、なんと一気に4名のエントリーがありました。

前もって「応募なんて来ない」と思いながら待っていたものですから、それは、浮かれたんですよ、「なんだ、募集なんて簡単だなと」と(苦笑)。

周りからも羨ましがられるし、そりゃ浮かれます(笑)。

4名は全て採用です。

とにかく、来たら全部OK! OK! OK! でした。それくらいに軽く考えていたんだと思います。

最初の子はね、早々にこういうことを言ってきたのです。

「専門学校の卒業が出来なくなりました、単位が足りなくて」と。

「何してるんだ?!」って話ですよね。専門学校卒が前提なのに…。

で、話してはみたんです。「建築をやってみたいのか?」ということを。

それは「やってみたい!」と、「じゃあ、卒業はしていないけど、うちでやってみるか?」ということで採用にしたんです。

2ヶ月持ちませんでしたね。

もう一人は施工管理をやりたいと入ってきた子でした。

その子がスケボーをやりたいと言い出したんです。趣味という訳ではなく…東京オリンピックで競技に選ばれた頃にちょっとしたブームになっていたのを憶えてらっしゃいますか?

その子の先輩がそれでショップを開くということになり、そこを手伝うことになったと。

やはり自分は夢を諦めることが出来ないので、辞めさせてほしいということでした。

あとの二人は、ひとりは今も続いているんですが、あとの一人は1年半程、もちました。

翌年、同じ求人サイトから、また3人のエントリーがありました。

同じように3人全てを採用にしたんです。

一人はあっという間に辞めました。

そしてもう一人も半年ほどで退職を申し出てきました。

この子も別の夢があることを語っていましたが、特に考えずに採用していました。

最後の一人は前年に入って、1年半程もったと、先程言った子がいましたよね。

その子と立て続けに辞めていきました。

理由は別々なんですけど、タイミングが同じだったこともあり、こちらとしては前年からの子は、戦力になりかけていただけに、落ち込みました。

実は翌年も1名を採用したのですが、体力がついていかず、休みがちになり、辞めました。この子も当初から大工以外の夢があったのを聞いていましたが、まぁええやろと思っていたんです。

これで向こう3年、8名の採用をした結果、残ったのはたった1名でした。

今にして思えば、なんですが、まぁ、大工になるということは、そんなに甘くないので、そこを本気でやりたいと思う気持ちの見極めは必要なのかな、と。

でないと「おぉ、来てくれた!もっと来い来い」と浮かれて、その結果、こういうことになる。結局、本気度がどれくらいあるのかをしっかり確認しないとダメなんです。

全員採用でほぼ壊滅という経験を経て、今は入社希望があった場合、会社説明と現場見学会をやってあげるから、おいでという形に変えました。

うちの経営理念を知ってもらって、そのまま現場でも見に行くか?という流れで、既存社員と会わせて、雰囲気を知ってもらうことから始めるようになりました。

これで、それでもやっぱりやってみたいという本気が確認出来たら、願書と「10年後の夢」を書いておいでという形になりました。

これで、その段において弾かれるケースも出てきました。

思っていたのと違うとか、雰囲気が合ってないとか、いろいろあるんでしょうけどね。

このやり方にして以降、応募は減りましたが、相手のことがもっと理解出来るようにはなりました。

こちらが篩(ふるい)にかけるということになるんですが、労使の関係性が始まる前は対等であるべきだと思っているんです。

だから、こちらも篩(ふるい)にかけるけど、貴方たちも我々をしっかり見て、篩(ふるい)にかけて欲しいんです。

今も、何も出来ない新人をイチから採るということに懐疑的な先輩業者もあって、「大工はいないか」と駆けずり回っているんです。

仮にそんな空きがあっても、もう数年もすれば、引退じゃないですか。

未来の事を考えると、絶対的に先送りに出来ないのに、目を瞑っているんです。

でも、本気で目指したい若者が消えてなくなった訳ではない。だから、探り探りであってもそういう若者を育てるということから目を背けずにやろうと思っているんです。

その経験から何を学びましたか?今後にどう活かしますか?

ちゃんと個別に社員と話す時間を大切にするようになりました。

それぞれに事情があって、どういうことを考えているのかを知ること、それにしっかり取り組むようになりました。